【古典・古文】平家物語「木曽の最後」現代語訳・品詞分解 その14
平家物語「木曽の最後」の品詞分解、現代語訳の第十四回です。
【本文】
太刀の先に貫き、高くさし上げ、大音声をあげて、「この日ごろ日本国に聞こえさせ給ひつる木曽殿をば、三浦の石田次郎為久が討ち奉つたるぞや。」と名のりければ、今井四郎いくさしけるが、これを聞き、「今は誰をかばはんとてか、いくさをもすべき。これを見給へ、東国の殿ばら、日本一の剛の者の自害する手本。」とて、太刀の先を口に含み、馬より逆さまに飛び落ち、貫かつてぞ失せにける。さてこそ粟津のいくさはなかりけれ。
【品詞分解】
(太刀の先に~名のりければ)
太刀 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
先 → 名詞
に → (格助詞)~に
貫き → カ行 四段活用 連用形
高く → 形容押し ク活用 連用形
さし上げ → 接頭語「さし」+ガ行 下二段活用 連用形
大音声 → 名詞
を → (格助詞)~を
あげ → ガ行 下二段活用 連用形
て → (接続助詞)~て
この → 代名詞「こ」+格助詞「の」
日ごろ → 名詞
日本国 → 名詞
に → (格助詞)~に
聞こえ → (ヤ行 下二段活用 未然形)世間で評判になる、世に知られる、噂される
させ → 尊敬 さす 連用形
給ひ → (ハ行 四段活用 連用形 尊敬語 補助動詞)お~になる、~なさる
つる → (完了 つ 連体形)~てしまう、~てしまった、~た
木曽殿 → 名詞
を → 格助詞
ば → (係助詞「は」が濁音化したもの)「をば」で「~を」
三浦 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
石田次郎為久 → 名詞
が → (格助詞 主格)~が
討ち → タ行 四段活用 連用形
奉つ → (ラ行 四段活用 連用形 促音便 謙譲語 補助動詞)お~申し上げる
たる → (完了 たり 連体形)~てしまう、~てしまった、~た
ぞ → 係助詞
や → 間投助詞
と → (格助詞)~と
名のり → ラ行 四段活用 連用形
けれ → 過去 けり 已然形
ば → (接続助詞 順接確定条件)~ので、~ところ、~と
間投助詞の「や」についてはこちらをどうぞ。
(今井四郎いくさ~手本。」とて)
今井四郎 → 名詞
いくさ → 名詞
し → サ行四段活用 連用形
ける → 過去 けり 連体形
が → 接続助詞
これ → 代名詞
を → (格助詞)~を
聞き → カ行 四段活用 連用形
今 → 名詞
は → 係助詞
誰 → 代名詞
を → (格助詞)~を
かばは → ハ行 四段活用 未然形
ん → 意志 む 終止形
とて → (格助詞)~と言って、~と思って
か → 係助詞
いくさ → 名詞
を → (格助詞)~を
も → 係助詞
す → サ行四段活用 終止形
べき → 意志 べし 連体形
これ → 代名詞
を → 格助詞
見 → マ行 上一段活用 連用形
給へ → (ハ行 四段活用 命令形 尊敬語 補助動詞)お~になる、~なさる
東国 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
殿ばら → (名詞+複数を表す接尾語)身分の高い人々
日本一 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
剛 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
者 → 名詞
の → (格助詞 主格)~が
自害する → サ行変格活用 連体形
手本 → 名詞
とて → (格助詞)~と言って、~と思って
(太刀の先を~なかりけれ。)
太刀 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
先 → 名詞
を → (格助詞)~を
口 → 名詞
に → (格助詞)~に
含み → マ行 四段活用 連用形
馬 → 名詞
より → (格助詞)~から
逆さまに → 形容動詞 ナリ活用 連用形
飛び落ち → タ行 上二段活用 連用形
貫かつ → (ラ行 四段活用 連用形 促音便)自分自身を貫く
て → (接続助詞)~て
ぞ → 係助詞
失せ → サ行 下二段活用 連用形
に → (完了 ぬ 連用形)~てしまう、~てしまった、~た
ける → 過去 けり 連体形
さて → (副詞)そうして、そのままで、そういう状態で
こそ → 係助詞
粟津 → 係助詞
の → (格助詞 連体格)~の
いくさ → 名詞
は → 係助詞
なかり → 形容詞 ク活用 連用形
けれ → 過去 けり 已然形
【現代語訳】
太刀の先に首を貫き、高く持ち上げて、大声をあげて、「この頃日本国中に名が知られなさった木曽殿を、三浦の石田次郎為久が討ち取り申し上げたよ。」と名のったところ、今井四郎は戦っていたが、これを聞いて、「今は誰をかばおうと思って、戦をしようか。いや、しない。これをご覧なさい。東国の方々よ、日本一の強く勇ましい者が自害する手本を。」と言って、太刀の先を口に含み、馬から逆さまに飛び落ち、貫いて死んでしまった。そうして、粟津のいくさは終わった。
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