今回は受身。
これもまた曲者。
対象を表す格助詞「に」が上にあれば簡単なんだが、そうでない場合も多い。
とにかく練習だ!
「る」
れ/れ/る/るる/るれ/れよ
接続 四段活用、ナ変、ラ変の未然形
「らる」
られ/られ/らる/らるる/らるれ/られよ
接続 上以外の未然形
意味
受身(れる、られる) 尊敬(~なさる、お~になる) 可能(~できる) 自発(自然と~れる)
「受身、尊敬、可能、自発」の見分け方
① 高貴な人物+「る・らる」 → 尊敬
② 感情・心中を表す語(思ふなど) + 「る・らる」 → 自発
③ 上に「~に」とある、ない場合は補える → 受身
④ 下に打消語がある → 可能
※ あくまでこれは目安であり、100%そうなるとは限らない。ただ、ほとんどの場合これでいけるので、まずはこれを試してみて訳がおかしいなら他をあたる。
例
ありがたきもの。舅にほめらるる婿。また、姑に思はるる嫁の君。毛のよく抜くる銀の毛抜。主そしらぬ従者。つゆのくせなき。かたち心ありさますぐれ、世にふる程、いささかの疵なき。(枕草子)
ありがたき →(形容詞 ク活用 連体形)
halusann.hatenablog.com
もの → 名詞(体言)
舅(しゅうと) → 名詞(体言)
に →格助詞
ほめら → ラ行 四段活用 未然形
るる → 受身 る 連体形
※ 上に格助詞「に」があるから受身と考える。
婿(むこ) → 名詞(体言)
姑(しゅうとめ) → 名詞(体言)
に → 格助詞
思は → (ハ行 四段活用 未然形)考える、願う、愛する、悲しむ
るる → 受身 る 連体形
※ 上に格助詞「に」があるから受身と考える。
嫁の君 → (嫁+の+君)名詞(体言)
毛 → 名詞(体言)
の → 格助詞 主格 ~が
抜くる → カ行 下二段活用 連体形
銀の毛抜 → (銀+の+毛抜)名詞(体言)
主 → 名詞(体言)
そしら → (ラ行 四段活用 未然形)人のことを悪く言う
ぬ → 打消 ず 連体形
従者 → 名詞(体言)
halusann.hatenablog.com
つゆ → (副詞)(下に打消語がきて)まったく、すこしも~ない
の → 格助詞
くせ → 名詞(体言)
なき → 形容詞 ク活用 連体形
※ 連体形の下には体言がくるから体言を補って訳す。文脈から「人」を補う。
かたち → 名詞(体言)姿、顔だち、容貌
心 → 名詞(体言)
ありさま → 名詞(体言)物事の様子、姿、態度
すぐれ → ラ行 下二段活用 連用形
世にふる → (世+に+ふる)この世に生き続ける
程 → 名詞(体言)間、ようす、程度、身分、距離、広さ、など
いささか → (副詞)(下に打消語がきて)少しも、まったく~ない
の → 格助詞
疵(きず) → 名詞(体言)傷、欠点、不名誉
なき → 形容詞 ク活用 連体形
※ 連体形の下には体言がくるから体言を補って訳す。文脈から「人」を補う。
訳 めったにないもの。舅に褒められる婿。また、姑に愛される嫁さん。毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人のことを悪く言わない従者。まったく癖のない人。見た目や心や態度がすぐれ、この世に生き続ける間、まったく欠点がない人。
ポイント
基本的には直前に格助詞「に」を探すだけの簡単なお仕事。
ただ、「に」がない場合が多いので、そのときは自分で補って現代語訳してみるしかない。
結局最後は訳してみるしかない!