平家物語「木曽の最後」の品詞分解、現代語訳の第五回です。
【本文】
木曽左馬頭、その日の装束には、赤地の錦の直垂に、唐綾縅の鎧着て、鍬形打つたる甲の緒締め、いかものづくりの大太刀はき、石打ちの矢の、その日のいくさに射て少々残つたるを、頭高に負ひなし、滋藤の弓持つて、聞こゆる木曽の鬼葦毛といふ馬の、きはめて太うたくましいに、黄覆輪の鞍置いてぞ乗つたりける。
【品詞分解】
木曽左馬頭(きそさまのかみ) → 名詞
その → 代名詞「そ」+格助詞「の」
日 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
装束 → 名詞
に → (格助詞)~に
は → 係助詞
赤地 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
錦 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
直垂(ひたたれ) → (名詞)鎧の下に着るもの
に → (格助詞)~に
唐綾縅(からあやをどし) → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
鎧 → 名詞
着 → カ行 上一段活用 連用形
て → (接続助詞)~て
鍬形 → 名詞
打つ → タ行 四段活用 連用形 促音便
たる → (存続 たり 連体形)~ている
甲(かぶと) → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
緒(お) → 名詞
締め → マ行 下二段活用 連用形
いかものづくり → (名詞)いかめしく堂々と見えるようなつくり
の → (格助詞 連体格)~の
大太刀 → 名詞
はき → (カ行 四段活用 連用形)身につける
石打ち → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
矢 → 名詞
の → (格助詞 同格)~で 注
その → 代名詞「そ」+格助詞「の」
日 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
いくさ → 名詞
に → 格助詞
射 → ヤ行 上一段活用 連用形
て → (接続助詞)~て
少々 → 副詞
残つ → ラ行 四段活用 連用形 促音便
たる → (存続 たり 連体形)~ている
を → (格助詞)~を
頭高に(かしらだかに) → (形容動詞 ナリ活用 連用形)矢羽が肩越しに高く見えるようにした、しゃれた矢の負い方
負ひなし → (サ行 四段活用 連用形)背負う
滋藤(しげどう) → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
弓 → 名詞
持つ → タ行 四段活用 連用形 促音便
て → (接続助詞)~て
聞こゆる → (連体詞)有名な、名高い、評判の
木曽 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
鬼葦毛(おにあしげ) → (名詞)「鬼」は強いことを表す。葦毛は馬の毛色のことで、白と黒などが混じった毛色
と → (格助詞)~と
いふ → ハ行 四段活用 連体形
馬 → 名詞
の → (格助詞 同格)~で
きはめて → (副詞)この上なく、非常に、最も、きっと
太う → 形容詞 ク活用 連用形 ウ音便
たくましい → 形容詞 シク活用 連体形 イ音便
に → (格助詞)~に
黄覆輪(きんぷくりん) → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
鞍 → 名詞
置い → カ行 四段活用 連用形 イ音便
て → (接続助詞)~て
ぞ → 係助詞
乗つ → ラ行 四段活用 連用形 促音便
たり → (存続 たり 連用形)~ている
ける → 過去 けり 連体形
【現代語訳】
木曽左馬頭は、その日の装束に、赤地の錦の直垂に、唐綾縅の鎧を着て、鍬形を打っている甲の緒を締め、いかめしく堂々としたつくりの大太刀を身につけ、石打ちの矢で、その日の戦いで射て少し残っている矢を、矢羽が高く突き出るように背負い、滋藤の弓を持って、有名な鬼葦毛という馬で、非常に太くたくましい馬に、黄覆輪の鞍を置いて乗っていた。
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