宇治拾遺物語の「絵仏師良秀」を品詞分解、現代語訳の第三回です。
【本文】
「あはれ、しつるせうとくかな。年ごろはわろく書きけるものかな。」と言ふ時に、とぶらひに来たる者ども、「こはいかに、かくては立ち給へるぞ。あさましきことかな。ものの憑き給へるか。」と言ひければ、「なんでものの憑くべきぞ。年ごろ不動尊の火災を悪しく書きけるなり。
【品詞分解】
(「あはれ、~)
あはれ → (感動詞)ああ
し → サ行変格活用 連用形
つる → (完了 つ 連体形)~てしまう、~てしまった、~た
せうとく → 得をすること、うまいことをすること
かな → (終助詞 詠嘆)~だなあ
年ごろ → (名詞)長年
は → 係助詞
わろく → (形容詞 ク活用 連用形)よくない
書き → カ行 四段活用 連用形
ける → 過去 けり 連体形
もの → 名詞
かな → (終助詞 詠嘆)~だなあ
と → (格助詞)~と
言ふ → ハ行 四段活用 連体形
時 → 名詞
に → (格助詞)~に
とぶらひ → (名詞)訪問すること、見舞うこと
に → (格助詞)~に
来 → カ行変格活用 連用形
たる → (完了 たり 連体形)~てしまう、~てしまった、~た
者ども → 名詞
(「こはいかに~)
こ → 代名詞
は → 係助詞
いかに → 副詞
かくて → (副詞)このように、こうして
は → 係助詞
立ち → タ行 四段活用 連用形
給へ → (ハ行 四段活用 已然形 尊敬語 補助動詞)お~になる、~なさる
る → (存続 り 連体形)~ている 注
ぞ → 係助詞
あさましき → (形容詞 シク活用 連体形)驚きあきれる
こと → 名詞
かな → (終助詞 詠嘆)~だなあ
もの → 名詞
の → (格助詞 主格)~が
憑き → カ行 四段活用 連用形
給へ → (ハ行 四段活用 已然形 尊敬語 補助動詞)お~になる、~なさる
る → (存続 り 連体形)~ている
か → 係助詞 疑問
と → (格助詞)~と
言ひ → ハ行 四段活用 連用形
けれ → 過去 けり 已然形
ば → (接続助詞 順接確定条件)~ので、~ところ、~と
(「なんでふ~)
なんでふ → (副詞)反語を表す。「どうして~か、いや~ない」
もの → 名詞
の → (格助詞 主格)~が
憑く → カ行 四段活用 終止形
べき → (当然 べし 連体形)~べき、~はず
ぞ → 係助詞
年ごろ → (名詞)長年
不動尊 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
火災 → 名詞
悪しく → (形容詞 シク活用 連用形)悪い
書き → カ行 四段活用 連用形
ける → 過去 けり 連体形
なり → (断定 なり 終止形)~である
【現代語訳】
「ああ、たいへん得をしたなあ。長年の間上手に書いていなかったものだなあ。」と言う時に、見舞いに来た者たちが、「これはどうして、このようにお立ちになっているのか。驚くべきことだなあ。霊が憑りつきなさっているのか。」と言ったところ、「どうして霊が憑りつくはずがあろうか、いやない。長年の間、不動尊の火災を下手に書いていたのである。
宇治拾遺物語「絵仏師良秀」品詞分解、現代語訳その1・2・4はこちら。
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