古典で避けて通れないのが識別の問題。
「なり」「なむ」「に」「る」の識別は入試の常連だ。
今回取り上げるのは「る」の識別に出てくる、完了・存続の助動詞「り」です。
この助動詞はとにかくよく出題される。
簡単に見分けがつくので覚えていなければ損をすることになる。
しっかりと覚えて一瞬で見分けれるようになろう!
【重要】この形を覚えよう!
【例】実際の例文を見てみよう!
この女房を待宵と申しける事は、ある時御所にて、「待つ宵、帰る朝、いづれかあはれはまされる」とお尋ねありければ、『待つ宵の更けゆく鐘の声聞けば帰る朝の鳥は物かは』と詠みたりけるによつてこそ、待宵とは召されけれ。(平家物語)
【品詞分解】
この → (代名詞「こ」+格助詞「の」)この
女房 → (名詞)貴人の家に仕える女性
を → (格助詞)~を
待宵 → 名詞
と → (格助詞)~と
申し → (サ行 四段活用 連用形 謙譲語)申し上げる
ける → 過去 けり 連体形
事 → 名詞
は → 係助詞
ある → (連体詞)ある
時 → 名詞
御所 → 名詞
にて → (格助詞)~で
待つ → タ行 四段活用 連体形
宵 → 名詞
帰る → ラ行 四段活用 連体形
朝 → 名詞
いづれ → (代名詞)どっち
か → 係助詞 疑問
あはれ → 名詞
まされ → (ラ行 四段活用 已然形)まさる、すぐれる
る → (存続 り 連体形)~ている 注1
と → (格助詞)~と
お尋ね → 名詞
あり → ラ行変格活用 連用形
けれ → 過去 けり 已然形
ば → (接続助詞 順接確定条件)~ので、~ところ、~と
待つ → タ行 四段活用 連体形
宵 → 名詞
の → (格助詞 主格)~が
更けゆく → (カ行 四段活用 連体形)夜が更けていく
鐘 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
声 → 名詞
聞け → カ行 四段活用 已然形
ば → (接続助詞 順接確定条件)~ので、~ところ、~と
帰る → ラ行 四段活用 連体形
朝 → 名詞
の → (格助詞 連体格)~の
鳥 → 名詞
は → 係助詞
物 → 名詞
か → 係助詞
は → 係助詞 注2
と → (格助詞)~と
詠み → マ行 四段活用 連用形
たり → 完了 たり 連用形
ける → 過去 けり 連体形
に → (格助詞)~に
よつて →(接続詞)「よりて、よって、よて」の形と同じ。意味は「よって」
こそ → 係助詞
待宵 → 名詞
と → (格助詞)~と
は → 係助詞
召さ → (サ行 四段活用 未然形 尊敬語)お呼びになる、任命なさる、召し上がる、など
れ → 尊敬 る 連用形
けれ → 過去 けり 已然形 注3
【現代語訳】
この女房を待宵と申し上げた理由は、ある時に御所で、「恋人を待つ宵と、恋人が帰る朝は、どっちが寂しさがまさっているか」とお尋ねがあったので、『恋人を待つ宵がだんだん更けていく夜の鐘の音を聞くと、恋人が帰る朝の鳥の声など物の数ではない。』と詠んだことによって、待宵とお呼びになった。
【ポイント】完了・存続の助動詞「り」の識別を振り返ろう!
形を覚えるだけの簡単なお仕事。
「まされる」のところでは、「まされ(re)」とエ段に接続していることから「る」を完了・存続と判断する。
また、完了か存続どちらかを考えるとき、まず存続(~ている)で訳してみる。
おかしくなければ存続で、おかしければ完了(~てしまう、~てしまった、~た)で訳す。
最後の方にある「召され」では、「召さ(sa)」とア段に接続しているから、完了・存続ではないと考える。
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