敬語の中で最もよく出てくるのが「給ふ」。
ほとんどが尊敬だから気にしていない人もいるが、実は謙譲もある。
今回は謙譲の「給ふ」を見ていこう!
給ふ(四段活用 は/ひ/ふ/ふ/へ/へ) → 尊敬語
給ふ(下二段活用 へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ) → 謙譲語
- 会話文、手紙の中で使われる。
- 「思ふ、見る、聞く、知る」の補助動詞として使われる。
- 本動詞として使われることはほぼないと思っていい。
- 訳は「おります、存じます、いたします、ます」など丁寧語っぽい。
さもありぬべき御気色の見えば、必ず身はいたずらになるともと思ひたまへしかど、(うつほ物語)
さも → (副詞)いかにも、ほんとうに、そのようにも
あり → ラ変 連用形
ぬ → 完了・強意 ぬ 終止形
べき → 推量 べし 連体形
御気色 → 名詞
の → 格助詞 主格 ~が
見え → ヤ行 下二段活用 未然形
ば → (接続助詞 順接仮定条件)~ならば
必ず → (副詞)きっと、確かに、間違いなく
身 → 名詞
は → 係助詞
いたづらに → (形容動詞 ナリ活用 連用形)訳に立たない、はかない、暇だ、何もない
なる → ラ行 四段活用 終止形
とも → (接続助詞 終止形接続)~ても
と → 格助詞
思ひ → ハ行 四段活用 連用形
たまへ → ハ行 下二段活用 連用形 (注)
しか → 過去 き 已然形
ど → (接続助詞)~けれども
(注)直後の「しか」が連用形接続の助動詞だから、この「たまへ」は連用形、つまり下二段活用の謙譲語だと判断する。
いかにもきっとあるだろう御様子が見えるならば、きっと我が身が死のうともと思っておりましたけれども、
※ 直訳しただけで分かりづらいが、宰相があて宮に求愛していて、諦めきれないから兵衛の君に仲介役をお願いしている場面である。「いかにもきっとあるだろう」は「あて宮が求愛を受け入れることがある」ってこと。つまり、脈があるなら死んでも仲介役を引き受けるって言っているわけだ。
四段活用か下二段活用を判別するだけの簡単なお仕事。
下にくる語から判断するだけだからそこまで難易度は高くない。
出現頻度が低い分、文中に現れたら問題になる可能性が高い。
「給ふ」は尊敬語だと決めつけずに、しっかり確認しよう!